確定申告時のコピーのアルバイト経験

失恋アルバイト,失恋

前回、僕が大学時代に人との交流の大部分がアルバイトであったという話をしました。そして、この確定申告のアルバイト経験が、多方面で今に繋がっていることをこの記事で書き留めたいと思います。

大学1年の時、確か2月下旬から3月にかけて、学芸大学前の税務署でのコピーのアルバイトの経験から、心機一転して人前で堂々と話せるようになりたいと思い、化粧品関連のナレーション(ワゴンDJ)の仕事を始めました。この経験が、後に社会人になって無職の時期があったとしても、大いに役立つことになります。この時の経験のおかげで、30歳後半から40歳前半の困難な時期に、ナレーションの仕事と私の他の仕事を掛け持ちして、何とか生計を立てることができました。このアルバイト経験が20年後に役立つとは、当時の僕には考えられなかった。

確定申告のアルバイト自体は、ワゴンDJの仕事とは全く関連がなかった。しかし、自分の吃音や話すのが得意ではない性格を乗り越え、ワゴンDJの仕事を始めるきっかけとなったのは、このアルバイトでした。そう考えると、僕の潜在意識は、20年後の状況を予測し、このアルバイト経験に導いてくれたのかもしれません。

直観は時を超越するものなのかもしれない。

確定申告のコピーのアルバイト

毎年2月、3月は個人事業の確定申告の時期。個人事業主の方は税務署に決算書類などを提出して、確定申告をする。

20年前のこの時代、確定申告の際の書類コピーが必要で、税務署はコピー会社に依頼してコピーのスタッフを雇っていた。これは一種の短期の請負ということになる。この頃の僕の愛読書は「フロム・エー」。今のようにフリーペーパーが溢れる時代ではなかったので、求人誌を購入していた。余談だが、恐らく僕は「少年ジャンプ」より「フロム・エー」や転職情報誌を購入していたと思う。それだけ、バイト情報は選び抜いていた。バイト情報誌を読むのも、世の中の仕事や社会の仕組みを知る上で役立った。

ちょうど後期の試験が1月に終わり、2月から何のアルバイトをしようかと探していたところ、目にとまったのが短期のコピースタッフの大量募集の求人広告だった。時給は1000円ほどだったが、簡単そうで、学生の募集も多いだろうと考え、僕は早速応募した。

応募者はかなり多く、僕が当時住んでいた神奈川から、東京の都立大学前の税務署に行くことになった。

確定申告のコピーのアルバイトでのリーダー体験

仕事初日、集まったメンバーは5人か6人だった。僕を含めて、法政大学の学生、中年の女性、短期大学の女の子などがいた。具体的な人数や顔を思い出すのは難しいが、このメンバーで仕事を進めることになった。

メンバー全員はどちらかというと控えめな性格だった。特に法政大学の学生は、僕より年上であったが、社交性に欠けているように感じた。男性の中では、僕が一番社交的だったのか、当日、請負元となるコピーの会社から担当者が来た際、僕がリーダーに指名された。

実際にリーダーとしての役割は、日報の提出や、ペアを組んでのコピー作業の順番を決めるだけと、特に難しいものではなかった。しかし、僕にとっては人の上に立つのが初めての経験だった。そのため、何となく嬉しい気持ちや、少し自分が偉くなったような気がした。このグループの中で、僕が指示を出す立場となり、他のメンバーにペアの交替の指示などを行ったのだった。

メンバーの女性に心を奪われる

このアルバイトのメンバーの中に、とても気になる女性がいた。彼女は短期大学に通っており、少し小柄だったが、非常に美人で目を引く存在だった。コピー機の横で彼女との会話は、僕にとって特別なものとなった。彼女との会話は日常の些細なことから始まり、特に彼女が芸人のダウンタウンが好きだという話を覚えている。昼食時には、たしかに食堂があり、彼女とともに何度か食事を共にしたこともあった。

彼女は僕より年上であったが、日々を重ねるうちに、僕は彼女に対する特別な感情を抱くようになった。理想としては、彼女と常にペアを組んで仕事をしたかったが、それが他のメンバーに対して公平ではないと感じ、恥ずかしい思いもして、皆が均等にペアを交替するように指示した。

ただ、彼女が他のメンバー、特に法政大学の学生と会話しているのを見ると、何となく嫉妬のような気持ちになった

帰り道、一緒に帰れない

彼女ともっと親しくなりたいという想いは日に日に強くなっていた。だが、当時の私はなぜか自分の気持ちに正直になれず、他のメンバーの目を気にしていた。彼女に好意を持っていることを隠したくて、帰りの道すがら彼女の存在を意識して避けてしまうような行動をとっていた。本当は彼女との帰り道を楽しみたかったのに、自分だけが先を急いで歩いてしまう。

逆に、法政大学の男性は彼女と楽しげに話しながら帰っている姿を何度か見かけた。それを見るたびに、自分の行動を後悔する気持ちと、嫉妬のような感情が交錯していた。

そして、アルバイトの最終日。彼女と連絡先を交換できたらと思いながらも、結局その一歩を踏み出すことができず、終始自分だけが先を急いで歩くこととなった。都立大学の駅での彼女との短い「さようなら」が、最後の会話となってしまった。

後になっての後悔

あの日、深く後悔した。なぜ自分の心の声を無視して逆の行動を取ってしまったのだろう。せっかくのチャンスを無駄にしてしまったのだ。たとえ付き合うことは叶わなくても、少なくとも友達にはなれたはずだ。その時の後悔は、まるで暗雲のように頭上に立ち込め、自分の性格や行動を強く悔やんだ。

数日間、その事ばかりを考えて悩んだが、その後、このような自分の性格や行動パターンを変える必要があると強く感じるようになった。そして、そのためにはバイトを通じて、人前で話す経験や社交的な活動を積極的に経験しなければならないと思った。

実際、私がワゴンナレーターのアルバイトに足を踏み入れた背景には、この時の自分の未熟さや後悔を乗り越え、新たな自分を築き上げるという意志があったのだ。