ワゴンDJのアルバイト2日目

アルバイト

独り立ちの挑戦

前回の話の続きとなるが、初日の研修では自分は話すことがまったくできず、本当にダメだったので、もしかしたらバイトを解雇されるのではないかと思っていた。ところが、研修が終わった後、自分一人で販促ナレーションDJとして店で働いて欲しいという連絡がきた。正直、その連絡には驚いた。しかし、電話で話す担当者の明るい声が印象的で、「とにかく行って欲しい。上手くなくても大丈夫。努力次第で問題ない。売上も気にしなくていい」と言われた。多くの場合、この手の仕事では売上ノルマのようなものがあるが、僕が当時勤めていた会社は売上については気にせず、ただ一生懸命やってくれればいいというスタンスだった。

緊張しながらも、僕は朝、指示された店舗へ向かった。それは西友新小岩店だったと記憶している。この店は新小岩駅を出てすぐのところにあり、店の入口には化粧品のキャンペーン会場が設けられていた。到着すると、化粧品メーカーのチーフに挨拶をすることになった。彼女はおそらく20歳後半の女性で、少し厳しい印象を持った方だった。彼女からその日の売上目標などを伝えられたが、正直、僕にとっては売上目標よりも、ちゃんと話せるか、仕事ができるかの方が気になっていた。売上の目標に関しては、心の中で少し気にしていたが、実際には考える余裕がなかった。

その会場では、女性美容部員2人と共に働くことになり、僕の役目はマイクを持ち、お客さんを集めることだった。

最初は緊張で言葉が出なかった

最初は緊張のあまり、言葉がうまく出てこなかった。何度も「いらっしゃいませ」と繰り返していた。その様子に、2人の美容部員女性も気づいたのか、「新人さんですか?」と質問された。研修の際には、「新人」としての特別扱いを受けないよう、また「学生」という事実を悪用しないようにと教えられていたので、僕はその場の雰囲気を和らげるために「いえ、何回かはやったことがあります」と答えた。とにかく、午前中は慣れることに全力を注いでいた。

少しずつ慣れてきたが、チーフからの痛烈な一言

午後に入り、少しずつ慣れてきた。研修時に野上さんから教わった方法で、プレゼントを持ってお客さんに直接声をかける手法に切り替えた。その呼び込みにより、何人かのお客さんをワゴンに引き寄せることができた。その後、研修で習ったようにタイムサービスのトークを展開し、少しずつ慣れ、化粧品も順調に売れてきた。

しかし、夕方が近づくと、朝挨拶を交わしたチーフが急に訪れてきて、『あの、そのようなトークなら、うちの美容部員でもできるわ。高いお金を出しているから、DJとしての特別な技術でお客さんを引きつけてほしいの。』と、半ば怒り気味に注意を受けた。

その言葉には本当にショックだった。やっとのことで慣れてきたと思っていたが、その後の休憩時間は心が沈んでいた。

時刻が18:00になり、業務を終えて帰宅した。

この店からのクレームが入るだろうと心配していたが、後に喜多さんからの電話が入った。彼の言葉によれば、その店のチーフは厳しい性格の人で、そういったことは気にせずに前に進むよう励ましてくれた。

喜多さんが自分の努力を認めてくれたようで、その言葉には本当に救われた。

もし、他の会社での仕事だったら、もしかしたら僕は解雇されていたかもしれない。しかし、喜多さんのように自分を理解してくれる人がいたおかげで、なんとか乗り越えられたと感じている。