思い出すの辛い人間関係のトラブル!しかしそこで覚醒した

加藤諦三大学生の時,加藤諦三

思い出すのも辛いことだが、大事なことなので書き留めておく。それはT先輩とのトラブルのこと。自分の人生を振り返っても、18歳の時に経験したT先輩のトラブルが人間関係の中で一番怖かった。と同時に、本当の強さとは何かと知ることになる。

僕が憧れていたT先輩

僕は基本、勉強好きで真面目なタイプだった。18歳の時の体重は50キロ前後、女の子の体重と変わらず、ひょうひょろしていた。筋肉は皆無。おまけに運動音痴ということで、女の子から全く持てなかった。当時、ビーパップハイスクールなどが流行していて、少しヤンキーぽい人が持てていた。僕が格闘技に興味を持ったのも、強さを求めるためだった。強ければ、馬鹿にされない。強ければ、きっと友達もできるし彼女もできる。そんなわけで、見た目の強さに憧れていた。そんな中で出会ったのが、中国拳法のT先輩。T先輩は国立大学の理工系で、極真空手の経験を持ち、とにかく強かった。しかも頭も良い。女の子からももてていた。少し喧嘩っ早いところもあって、当時ディスコの警備などもしていて、セキュリティとして結構喧嘩などもして、相手を倒していた。そんな武勇伝を聞くたびに、僕はT先輩に憧れていて、T先輩をかっこいいと思っていた。こんな根暗な僕でも、T先輩は相手にしてくれて、よく飲んだり、自宅に招いてくれた。また、夏には四国に大橋君とT先輩との3人で旅行に行き、海岸で楽しく過ごした。また、ナイトプールなどにも行き、夏は楽しんだ。

T先輩の変貌 被害に遭う

T先輩は最初の頃は優しく接してくれたが、付き合いが深くなるにつれ、次第に横暴になっていった。僕に様々なことを命令するようにもなった。しかし、この時点でT先輩の本性に気付くことなく、T先輩のように強くなることを夢見て、彼の真似をしていた。そして、それが本当の強さだと勘違いしていた。そして、ついに事件が起こった。事件の発端は9月の学園祭の参加不参加のことだった。

実際、6月にも学園祭に参加していたが、僕はその時飲みすぎて救急車で運ばれるという失態を犯してしまった。自分のミスではあるが、多くのお酒をT先輩から勧められたことも原因の一つだった。

周りにも迷惑をかけていたため、今秋の学園祭は部としての参加を控えたいとT先輩に提案したら、彼は突如として怒り出した。これまでの練習では厳しい時もあったが、彼が激怒することはなかった。しかし、今回彼は自分の言う通りに事が進まないことに憤慨した。僕はその様子に恐怖を感じ、同期の大橋くんや井上君、先輩のKさんも賛同してくれた。唯一T先輩に立ち向かえるのはKさんだった。僕はKさんにT先輩の態度を相談した。そして、学際の参加に関して、T先輩と部の仲間との間で大きなトラブルが発生した。

ある日、僕はT先輩から「話がしたい」と呼び出された。彼の車で、人目の少ない草むらへと移動した。その時点で既に不安を感じていたが、きちんと話せば解決すると思っていた。ところが、車から降りるなりT先輩は僕に突如として掌底で2発打ちかけてきた。僕はその場に倒れ、確かに彼は手加減していたと感じた。T先輩のパンチは非常に強く、まともに受ければ大怪我をすることは間違いない。そのショックは計り知れなかった。とにかくこのままではまずいと感じ、T先輩の意見に賛同し、学園祭に参加することにした。そして、何とかその場を逃れることができた。

K先輩に相談し、話し合いへ

僕はT先輩に殴られ、本当にショックを受けた。まさか大学に入り、こんな事態が待ち構えているとは思ってもいなかった。
唯一の頼りだったのはK先輩。当時、K先輩だけがT先輩と互角に戦える存在であり、議論でも引けを取らなかった。K先輩は真摯に相談に乗ってくれ、彼の人間性を尊敬していた。詳しく話を聞くと、T先輩のトラブルは僕だけのことではなかった。Yさんという先輩もいて、彼も僕と同様にT先輩に支配されそうになり、一時期部から離れたことがあった。僕と同じように、T先輩は最初は優しく接近し、次第に手を組んで暴力による支配を始めていた。

K先輩は部全員での話し合いを提案し、今回の問題を解決する方針と、これ以降T先輩との拳法の練習を共にしないという決定を下すことで、T先輩との話し合いを持ちかけることになった。

話し合い前日、僕は自分の愚かさに気づく

それは話し合いの前日のことだった。Tさんとのトラブルで、心が張り裂けそうだった。Tさんの恐怖がまだ僕の中にあった。当時、サークルの友達、大橋君と仲が良く、Tさんの件もあってよく彼の家を訪れていた。大橋君は教育学部で心理学を学んでおり、僕に加藤諦三さんの本を薦めてくれた。
リンク: 加藤諦三さんの本

最初はあまり興味が湧かなかったが、話し合いの前日、僕は怖くて不安になったので、東京までの電車の中でその本を読み始めた。読んでいるうちに、自分の心がその本の中にあるかのように感じた。内容は、幼い頃に家庭内での温かい心の触れ合いがない人は、周囲の期待に応えることでしか愛情を得られないと思い込む、というものだった。

読み進めるうちに、感情が溢れ、電車の中で涙が止まらなかった。そのとき、僕は自分が追い求めていた表面的な強さが間違っていることを痛感した。真に強い人は喧嘩などはせず、他人を支配することもない。他人を暴力で支配しようとする人ほど、実は内心が弱く、孤独であることに気づいた。僕は目覚めた。

そして、僕の味方であるK先輩やサークルの仲間に感謝の気持ちが溢れ出た。確かに僕は力が弱く、無力かもしれない。しかし、助けてくれる仲間がいることに心から感謝した。その感謝の気持ちで涙が止まらなかった。明日、Tさんとの話し合いに備えて、不安や恐怖でいっぱいだったが、これまで言えなかった自分の意見をTさんに伝える決意を固めた。この体験は、僕にとって大きな変化の瞬間だった。

当日の話し合いでTさんと決別、自分の意見を伝える

そして、話し合いの当日が来た。夕方の大学は学生で賑わい、サークル活動の楽しい雰囲気が満ちていた。そんな中、なぜこんな重苦しい話し合いをしなければならないのかと思っていた。

時間になり、Tさんが現れた。最初、僕はTさんの存在に怯えて言葉を失っていたが、K先輩がうまくTさんと対話を進めてくれた。そして、ついに勇気を出して、Tさんに暴力を振るわれたことや、もう練習をしたくないという意思、そして学際に参加しないという意志をはっきりと伝えることができた。

全てはK先輩のおかげだった。K先輩は僕の人生の大きな恩人となった。

話し合いが終わり、僕はTさんから距離を置くことができた。しかし、中国拳法はK先輩を中心に活動しており、K先輩の卒業を控えていることもあり、僕も1年生の12月にはサークルをやめることとなった。